El Bulli

El Bulli 「エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン」を奥さんと見に行きました。
前提知識無しで見に行ったので、何時「物語的な展開」になるのだろうかと思っていたら、最後までドキュメンタリーのままで、ちょっと拍子抜けしたわけで、実際のところ1時間にまとめた方が収まりは良かったのでは?とか思ったのだけど、色々と面白いところもあって、何だかんだで2時間楽しめました。

全てはデータで

エル・ブリでは、バルセロナの一画に場所を移して10月から半年強の研究をおこなう。映画はその研究現場から始まる。
ここで面白かったのが「データで残すんだ。紙では意味が無い。」というフェラン(シェフ)のセリフ。
あらゆる食材に対してあらゆる調理法(「焼く」でも、油無し、油少なめ、油多目とか各種)で徹底的にパターンを尽くした試行を行い、その結果を記録し、検証した結果に対してフィードバックをかけて再度試行する。
この繰り返しを行うにあたって、毎回毎回の紙を「結果」だけを積み重ねても取り扱えなくなる、というわけ。
つまりは、成果のデータベースを作れ、ということなわけで、正直、この時点で、その姿勢にかなり共感と信頼を持ってしまいました。

半年営業というか開発

6月になったらレストランに戻って営業開始。
営業は単なる営業では無く、むしろ研究の成果を完成させていく作業のようで、実際にレストランに戻ってから1カ月位経ってようやく「今年もいけそうだ」とか言い出す。半年間でため込んだ要素を元に、厨房の中で徐々にあるいは唐突に完成されていく様は、「やっとここまで来たか」という達成感がある。
まあでも、結構フェランの言動は気まぐれなので、片腕となるメインスタッフ数名は大変そうに見える。それでも10年以上も付いて行っているのは、多くの職人といわれる人が持つ「才能あるものへの崇拝」が大きいんだろうなあと。
現場で突然のインスピレーションによりレシピに手を加えられても、顧客の反応が良ければ、「やはりこの人は素晴らしい」と良い笑顔を見せてしまう。すぐれた職人であるが故の業のようなものを感じてしまい、ちょっとほろ苦い気分に。

日本食との接点

時々、ポロっと日本語(の単語)が出てきてドキッとする。
「ユズ」「シャブシャブ」とか、色々。メニューを見ても、日本だけでなく色々な国の食材や調理法を研究して取り入れているのがわかる。ただ、「みかんには氷が合うんだ」とかは、「それ、氷ミカン!」と思わず笑ってしまった。

食欲はわかないけど、でも

見終わってから話したのは、「映画で見る限り、できた料理は別に美味しそうには見えないし、食欲が刺激される事も無い。でも、何か素晴らしいものであるような気はする」と。
奥さんは「綺麗だったよね」「だから料理というよりは芸術なんだよ」と返してきて、鈍い私は、やっとこの映画が有名レストランと料理のドキュメンタリーではなくて、あるアーティストの記録映画である事に気付いたわけです。
芸術家の創造の過程と、それに(幸せに)振り回される人々の姿を楽しめる人へお勧めです。