tracerouteで世界とのつながりを見てみる
遅ればせながらDVDで第9区を見ていて、「南アフリカかあ、イギリス連邦だよなあ」とか考えてたら、唐突に「そういえば今もオーストラリアに行くにはロンドンを経由するのかな?」という疑問がわいてきました。
地理の話では無く、ネットワークの話。4,5年前にtracerouteで日本から海外への経路を色々と見てたら、オーストラリアへ行くのにロンドンを経由するケースがあって、「さすが英連邦王国。」とか思った記憶があったんです。さすがに今は違うんじゃないかと思いつつも、幾つか調べてみる事にしました。
調べ方
要はtracerouteをして、経由しているIPアドレスの場所を確認していけば良いのですが、以前書いたスクリプトは無くなっているし何かあるだろうと思って調べたら、VisualRouteのデモサイト が良さげだったので、今回はこれを利用します。
なお、あくまでデモサイトなので1日あたりの利用回数制限があります。本格的に利用するならば製品を購入する必要があります。
他にも、世界各国のtracerouteサイトのポータルである traceroute.org とか、traceroute 結果を貼り付けたら地図にマッピングしてくれるGoogle Maps Hacks とか、必要に応じて使い分ければ良いかと思います。
結果
幾つかの国について調べた結果を表にしてみました。最初はイギリス関係だけを見ていたのですが、「そう言えば、このところ動乱の続くリビア*1は?」とか「ブータンとかどうなってるの?」とか思いついたものを色々と追加してます。
なお、確認は基本的に1回だけなので、数字はブレがあるでしょうし、経路も多少変わる可能性があります。あくまで、今回調べてみたらこういう結果になった、というだけです。
国名 | 調査対象サイト | Hop数 | レスポンスTime(ms) | 主な経路 | グループ | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
英国 | 英国王室www.royal.gov.uk | 14 | 378 | tokyo-osaka-london | 英連邦王国 | ほとんど直接UKへ。ちなみに英国政府 |
カナダ | カナダ総督府www.gg.ca | 22 | 305 | tokyo-seattle-chicago-toronto | 英連邦王国 | − |
ジャマイカ | ジャマイカ内閣www.cabinet.gov.jm | 19 | 287 | tokyo-seattle-dallas-san antonio | 英連邦王国 | ジャマイカ本国には行かず |
オーストラリア | オーストラリア総督府www.gg.gov.au | 17 | 205 | tokyo-sydney | 英連邦王国 | hong kong経由の場合あり |
南アフリカ共和国 | 南アフリカ共和国政府www.gov.za | 23 | 443 | tokyo-seattle-new york-richards bay(za) | イギリス連邦 | 最後の方はMauritiusも絡んでいるように見える |
インド | インド共和国政府india.gov.in | 23 | 173 | tokyo-singapore-chennai-new delhi | イギリス連邦 | − |
パキスタン | パキスタン・イスラム共和国政府www.pakistan.gov.pk | 16 | 226 | tokyo-san jose-ashburn-providence(US) | イギリス連邦 | サイトはUSAに設置しているもよう |
エジプト | エジプト・アラブ共和国政府www.egypt.gov.eg | 18 | 337 | tokyo-seattle-new york-paris-egypt(?) | − | − |
サウジアラビア | サウジアラビア王国政府www.saudinf.com | 17 | 287 | tokyo-san jose-redwood(US)-gloucester(UK) | − | サイトはUKに置いているようです |
イラン | イラン大統領府www.president.ir | 18 | 430 | tokyo-san jose-redwood-london-amsterdam(NL)?-tehran(IR) | − | − |
イスラエル | イスラエル国政府www.gov.il | 16 | 375 | tokyo-san jose-new york-london-petach tikva(IL)-jerusalem | − | − |
リビア | 大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国政府gpco.gov.ly | 20 | 194 | tokyo-seattle-atlanta-anaheim(US) | − | リビアもUSにサイトかあ |
チュニジア | チュニジア共和国政府www.ministeres.tn | 22 | 395 | tokyo-amsterdam(NL)-frankfurt(DE)-(italy?)-tunis(TN) | − | − |
トルコ | トルコ共和国大統領府www.tccb.gov.tr | 26 | 347 | tokyo-seattle-washington-frankfurt(DE)-london-ankara(TR) | − | 一旦londonを経由してるのが面白い |
ロシア | ロシア連邦政府government.ru | 25 | 342 | tokyo-seattle-washington-frankfurt(DE)-moscow(RU) | − | − |
カザフスタン | カザフスタン共和国政府www.government.kz | 18 | 343 | tokyo-los angeles-london-moscow(RU)-almaty(KZ) | − | えらく大回りのような |
ウクライナ | ウクライナ政府www.kmu.gov.ua | 16 | 322 | tokyo-seattle-frankfurt(DE)-(ukraine?) | − | こっちはロシアを経由しない |
スイス | スイス連邦政府www.admin.ch | 20 | 335 | tokyo-san jose-new york-zurich(CH)-berne(CH) | − | SwitzerlandはCHかあ。始めて知ったなあ |
ブータン | ブータン王国政府公式サイトwww.bhutan.gov.bt | 15 | 331 | tokyo-hong kong-thimphu(BT) | − | − |
中国 | 中華人民共和国中央人民政府www.gov.cn | 16 | 239 | tokyo-hong kong | − | 中国国家博物館www.chnmuseum.cnの方はtokyo-beijing(CN)というルートなので、基本的には変な迂回をすることもなくつながっているもよう |
大韓民国 | 大韓民国大統領府www.president.go.kr | 15 | 156 | tokyo-sungnam(KR)- | − | さすがに太平洋を渡る事はしない。あと、Korea Telecomはwhoisで見たらハングルでも情報が入っていて、ちょっと驚き |
朝鮮民主主義人民共和国 | 政府公式ポータルサイト「ネナラ」www.naenara.com.kp | 20 | 361 | tokyo-seattle-san francisco-los angeles-lancaster-beijing(CN)-potong gang(KP) | − | 朝鮮民主主義人民共和国政府公式サイト?www.korea-dpr.comは、KPドメインじゃないんだなあ、しかもspainに行っているみたい |
モンゴル | モンゴル国政府open-government.mn | 22 | 328 | tokyo-seattle-san jose-los angeles-ulaanbaatar(MN) | − | 太平洋を渡るんだあ |
台湾(中華民国) | 我的E政府(中華民国の政府総合サイト)www.gov.tw | 14 | 49 | tokyo-taipei(TW) | − | えらく近いし通信も安定している |
ベトナム | ベトナム社会主義共和国www.chinhphu.vn | 16 | 143 | tokyo-(vietnam) | − | VietNam Post and Telecom Corporation (VNPT)に行ってるのはわかるけど詳細な場所は不明です |
シンガポール | シンガポール共和国政府www.gov.sg | 14 | 138 | tokyo-singapore(SG) | − | − |
カンボジア | カンボジア王国政府www.cambodia.gov.kh | 18 | 315 | tokyo-(vietnam)-Phnom Penh(KH=Cambodia) | − | − |
見ればわかるわけですが、なかなか興味深い経路になっているところが幾つかありますね。
- 中央アジアから西は、米国−ヨーロッパのルートで行く。(モンゴルでさえ)
- ヨーロッパの玄関口は結構分散している。(以前はロンドンが非常に強かったような記憶がある)
- 東アジア、東南アジアへは(ほぼ)直接つながっているところが多い。(さすがにオーストラリアも大丈夫)
- といっても北朝鮮は別。
- 小さな国などは、政府のサイトであっても自国にサイトを置いていないケースがまだまだある。
- 一方で英国政府はakamai使ってるけど王室は使ってない。
などが、私が興味深かったところです。
まあ、インターネットの回線って人工的なものですから、地理的な条件以外の要素に左右されるのは当然ではあるのですよね。それでも以前よりは素直なルートになっているような気がします。今回は、このような結果になりましたが、しばらく経てば、また変わってくるでしょう。今回のような調査を定期的に実施・記録したデータがあれば、経年変化を見るだけでも楽しそうですけど、それは見つけられなかったので残念です。
また何年かして思い出したら調べてみて、世界が(おそらくは)縮まったのを確認してみたいですね。
2011/03/06追記
なんか表の右側が切れて表示できない。プレビューでは問題なかったので、備考とか書いてるのに。。。